犬と猫の乳歯遺残
犬や猫の乳歯遺残とは、永久歯が生えてきても乳歯が歯列中に残っている状態のことです。放置していると、さまざまな悪影響をもたらす場合があるので注意が必要です。
本記事では、犬猫の乳歯遺残について症状や診断方法、治療方法について解説していきます。
犬猫の乳歯遺残の原因
通常、永久歯は乳歯の根本の歯根部を吸収しながら、押し出すように生えてきます。
そのため、乳歯は、永久歯が生えてくるタイミングで抜け落ちるケースが大半です。
しかし、乳歯遺残が起こっている症例では、乳歯の歯根部が十分に吸収されず、永久歯が生えても乳歯が残ってしまいます。
乳歯遺残の好発部位としては上顎、下顎共に犬歯の部分が多く、猫よりも犬(小型犬)で多発する疾患です。
犬猫の乳歯遺残の症状
乳歯遺残が起こっている症例では、永久歯の噛み合わせが悪くなり、不正咬合がみられる場合があります。
不正咬合により、口内炎や歯肉炎などのさまざまな口腔内疾患を引き起こす可能性があるため注意をしましょう。
また乳歯と臼歯の間にご飯の食べカスが溜まりやすくなり、歯周病や口臭の原因にもなります。
犬猫の乳歯遺残の診断方法
犬猫の乳歯遺残の診断方法としては、身体検査にて口腔内を確認し乳歯が残っていないかどうかを判断します。
生後6ヶ月齢程度までは、乳歯が残っていても不思議ではないですが、さらに年齢を重ねても乳歯が残っているようならば、乳歯遺残の可能性があるでしょう。
口の中の確認が困難な場合には、鎮静や麻酔をかけての処置が必要になる場合があったり、レントゲン検査で乳歯と永久歯の歯根部を確認したりする場合もあります。
当院では生後6カ月頃に避妊・去勢手術を行なっております。避妊・去勢手術は全身麻酔をかけて行いますので、その際に乳歯遺残していないかをチェックし、乳歯が残っている場合には一緒に抜歯をすることをお勧めしております。
犬猫の乳歯遺残の治療方法
犬猫の乳歯遺残の治療方法は、抜歯です。
乳歯遺残は、放置しておくと歯周病や歯肉炎などの口腔内疾患に繋がりますので、診断後なるべく早期に乳歯を抜歯します。
切歯や臼歯の部分は、歯根が吸収されていることも多く、比較的抜歯しやすいと言われています。
しかし、犬歯の部分は全く歯根が吸収されていない場合もあり、抜歯が困難なため、しっかりと麻酔をかけての処置が必要になるでしょう。
まとめ
本記事では、犬猫の乳歯遺残の原因や症状、診断方法、治療方法について解説しました。
乳歯遺残は、放置していると口腔内疾患を引き起こす原因になるので、早期の対処が必要です。
飼い主さんは、生後10か月を過ぎても乳歯が残っていないかどうか、お家でもチェックしてみて、もし残っているようならば、早めに動物病院に相談するようにしてください。
<参考文献>
獣医内科学 第2版 p190
千葉県市川市、西船橋地域(原木中山、妙典、行徳)を中心に
飼い主さんの立場にたった医療を提供する
うえの犬猫病院